読書感想:夏目漱石 「こころ」



カシオの電子辞書に内蔵してある、夏目漱石「こころ」を読み終えた。

以前にも書いたが、この小説の初めの部分は、あまり好きでなかった。

なぜ学生が鎌倉に来て、中年のおじさんへのストーカーまがいの事をしなければいけないのか、この意味が分からない。

そして、知りあった、その中年のおじさんを「先生」と呼び、月に何度もその「先生」の自宅を訪問する。普通、学生がそんなことするのか、これも分からない。

小説の中盤は学生の親父さんが病気で今にも死にそうになることが描かれている。

その中にあって、卒業してからの就職などを、鎌倉で知りあった、「先生」に頼もうとしている。

自分で自立して、なぜ行動を起こし、自分で職をさがさないのか。

そして、後半部分は自分の親が今死ぬか、明日死ぬかの瀬戸際にあるのに、「先生」から届いた、分厚い手紙を持って、列車に乗る。

後半部分の殆どはその手紙の内容であった。

ここで、漱石がこの小説を中で言いたかったことを全て書いてあるように思えた。

その頃の時代背景。

明治天皇が崩御され、乃木大将が殉死する。
明治から大正の時代に移る。
妻から冗談で殉死したらと言われる。

私には「こころ」の本当の意味が、読み切れない。

「K」は自分の親や養家を欺いて、そして勘当されても、自分の意思を貫く、意思が強く、自立心のある書生だ。
その書生が好きだとひそかに思い、まだ告白は出来ないが、「私」と言われる同居の友人に打ち明ける。そしてその「私」に裏切られ、お嬢さんをとられてしまう。
その後や小説の冒頭の書き方から見ると、お嬢さんも心底「k」に惚れてはいなかったと見える。いや「私」よりは「K」の方が話しやすく、一緒にいると居心地が良かったぐらいだろう。

それだけのことしかないのに、なぜ「k」は頸動脈を自ら切って死ぬのか。
死てそんなに簡単に死ねるものなのか。

「先生」は「K」の心を知りながら、お嬢さんと結婚の約束を交わし、その後すぐに「K」が自殺したのだから、相当のショックを隠せないのは分かる気がする。

しかし、それを何十年も引きずり、仕事を何もせず、酒に逃げ、本に逃げ、毎月の月命日には「k」の墓参りをする暮らしを続ける。

田舎の大地主の農家に生まれ、叔父さんに大分財産をとられたが、それでも一人一生遊んで暮らせる、金を親の遺産から引き継いだ。

普通なら、自分で稼げなければ生きていけない、卒業する前に就職活動をし、卒業とすると同時に職場で働き、いい人に巡り合い、結婚をし、家庭を持つ。

そして子が出来、家族を養うため、家族の平安の為、男は一生懸命に働く。
若き頃、おぼろげながら持っていた、自分の夢を、一つ一つ捨てながら、働く。

この小説に出てくる人たちは全て大金持ちだ。

庶民が自立して働くことなどは出てこない。

自分の事だけだ。

自分は逃げ、自殺し、残された妻に相当の財産を残しても、その後の妻の事はどうなる。


まだまだ、読み切れない。

私の浅い知識では「こころ」を読み解くことは出来ないと知った。


それでも次読むのも、夏目漱石の「それから」にした。

日本文学の文豪といわれる人の作品をほんの数点しか読んでいないので、これではアカンと自分の「こころ」が言っている。

その「こころ」に従おう。







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