百田尚樹氏の最新本「殉愛」をやっと読了した。
たかじん、さくらさんの最後の741日、そのほとんどがたかじんとさくらさんの食道がんとの闘病の日々。
その記録をさまざまな関係する方々に取材し、まとめあげた本である。
百田さんの文章は読んでいて、流れるようであり、情景をうかべさせてくれる。
巻頭の写真の日付を見ると、目頭が熱くなる。
2013年10月5日に開かれた「サロン105」でのサプライズのタンジョウパーティ。
亡くなる3ヵ月前である。
10月10日の札幌市役所での婚姻届。
12月23日の腹膜播種。腹膜内に米粒くらいの小さなガンが無数にできるもの。
その後の余命告知。
あなたは後何日しか生きられませんと言う、完全な余命告知。
その時のたかじんさんとさくらさんの気持ちを思うと、本当に涙がにじんでしかたがなかった。
弟が肺ガンで亡くなるのを、みとったことが記憶に甦ってきた。
ベッドの右横に跪きながら、私は弟の足をさすっていた。
がりがりに痩せた顔の弟が苦しそうに顎を少し動かしながら呼吸をしている。
そして、苦しそうに何かを口ずさみそうになった。
すぐに、嫁さんと子供に声をかけた。
嫁さんと子供が弟の手を握り、最後の声掛けをした。
それからしばらくして弟の呼吸は止まった。すぐに主治医に電話をした。
呼吸が止まってから私は弟の手首を握った。まだ脈はかすかながら打っていた記憶がある。
本当にさくらさんみたいな人がいることがいまだに信じられない。
すごい人だ。
30そこそこの若さで、なんでそこまでできるのか。
そんな、人が世の中にいる。
これを知っただけでも、この本を読んだ価値がある。
しかし、「殉愛」の読後感はなぜか悪い。
いつもの百田氏の本ではない。
あまりに「さくらさん」が常人離れし、出来過ぎているからだ。
終末の看護、介護は本当に本人も周りも壮絶だ。
相方や子供に世話にならないように、日々運動し、酒を控え、認知症になることを遅らせるためにも、周りの事に興味を持ち、新聞を読み、本を読み、ラジオを聞き、仕事をし、仕事仲間と愉快に会話を交わし、畑作業に精を出し、畑仲間のお年寄りの皆さま方と、そしてご近所さまとも、よくしゃべり、笑い、関心を持ち、自分の死期を遅らせ、健康寿命を伸ばしたいたいものだ。
そして、死ぬ時は・・
家族が、≪お父さん、いつも早く起きるのに、今朝は遅いから、見てきて。≫
お父さん(自分)は、暖かいお布団をかぶり、安らかな寝顔で亡くなっていた。
24時間の仕事で仮眠に入る前に、簡易ベットに寝ながら、そんなことを思った。
しかし、死ぬ前に・・
最後の言葉として、相方に言いたいことがある。
お前に出会えてよかった。
お前と出会えて、本当に楽しい人生だったと。
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