電車の中で  おもらし



それは、出勤時の事だった。

乗り換え駅の日根野駅に着き、向かいのホームのすでに待っている関空行きの電車に乗った。

その前に話さなければならないことがある。

自宅駅に電車が到着した。

電車に乗り、窓際の扉の近くに立ち、電子辞書の蓋を開け、夏目漱石の「私の個人主義」をひらいた。

そこに、背の高いサラリーマン風の男が入ってきた。

そして、その男は窓際に立っている、背の低い私の所にやってきて、もっているカバンを押しつけた。それほど混んでいないが、何なんだと思った。

機嫌が悪くなった。

私の読んでいる電子辞書を上から目線で眺めている。

腹立つやっちゃな。

と、思ったが、どうすることもできない。

しばらくして、我慢できず、窓ぎわを離れ、数メートル先に移動した。

圧力に負けた。



電車が乗り換え駅の日根野駅に着いた。

電車に乗った。

また、窓際に立った。

何かが変。

靴が濡れていた。

背中のバックからポタポタと水滴が落ちている。

すぐに、電車から降りた。

バックの中を見た。

妻(さい)が入れた、水筒のふたが開いていた。

この水筒のお茶がリックサックの中にこぼれたのだ。

24時間勤務のための着替えの靴下、下着、ハンカチ3枚、それとティシュペーパー等々が全てずぶぬれ。

人生初めての経験だった。

電車の出発時間までには1分も無い。

確認してすぐ、電車に乗った。

りんくうタウン駅に着いた。

まだ、背中のバックからはポツポツと滴り落ちている。

私の歩いた後に、水の点滴あとも。

バックを開けた。

着替えのシャツで水たまりを拭いた。

それで、やっと滴り落ちた状態は終わった。


少々腹が立ったが、すぐに収まった。

腹を立てたらアカン。

こんなことを経験出来、ブログに記録できることを幸せと思わなければ。

カバンを押し付け、私の背より50㎝以上高みから、見ている人も、背が高いから仕方ないと思うようにした。

でも、事実は知らさなければ。

関空駅に降り、歩きながら、妻(さい)に電話をした。

水筒のロックがかかっていなく、リックの中、水浸しになったよ。

私も気をつけるが、あなたも気をつけてねと。


これからの一日を大事にしなければ。

電車で読み始めた、夏目漱石の「私の個人主義」をその日は読み終えた。

良いことを云ってますね。

夏目漱石は。







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